風景録

O様邸の庭には名前がある。ご主人と、息子さん、そしてお孫さん。親子3代の名前から一文字ずつとって、「種俊多翼の園」。長年の夢だったこの日本庭園をずっと大切にしてほしい。この庭を囲んで、息子や孫の家族が仲良く暮らし続けてほしい。そんな願いを込めたそうだ。造園を依頼された当初から「家族」がキーワードだった。「自宅に本格的な日本庭園を持つ、というのが望みだったのですが、ただ鑑賞するだけでは意味がないと思うに至った。家族が集う場所。孫と一緒に遊べるような場所。そんな庭にしたい。」そんなオーダーを汲み取って、造園コンセプトは「遊」とした。植栽や石を全面に敷き詰める、という日本庭園のセオリーから大きく外れ、代わりに芝生を敷き、池の水深も浅めに設計。子供にとっての安全を考慮した。今、O様邸からは季節ごとに楽しそうな声が聞こえてくる。夏にはバーベキュー。秋にはビワの実の収穫。憧れたのは、庭園ではなく、幸せに暮らす家族の景色。その景色が広がっている。