XIV TOBA BETTEI | Toba-shi, Mie
エクシブ鳥羽別邸
三重県鳥羽市
XIV TOBA BETTEI | Toba-shi, Mie
三重県鳥羽市
エクシブ鳥羽別邸は、図面通りには完成しなかった。現場入りした、工事の初日。職人たちは図面を片手に、表情を曇らせていた。「思ったより庭園両脇の森が茂っているな」「鳥羽湾から吹き込む潮風も強い」想定外の状況に、すぐさま、設計士に相談を持ちかけた。「森の景観との調和を図るために植栽の数を減らしてはどうか。」「海に面する樹木は潮風に耐えられるよう、背が低い樹種に変えたほうがいいのではないか。」現場で培った経験と直感からくる判断だった。はじめは納得していない様子の設計士とも、議論を重ねるごとに信頼を築いていった。工事終盤には、池の景観の「要」とも言える置石の選定を任せたい、と設計士自ら職人にオーダーを飛ばした。「現場の判断で優先してほしい」そんな意図だった。職人が和歌山や能登まで自ら足を運び、鳥羽湾のスケールに見劣りしないよう、30t、24t、11t級の石材を選定。周囲の景色に溶け込むよう石の向きや傾きを細部までこだわった。完成したのは、空間全体で一つの作品を成す、まさにここでしか味わえない唯一の絶景。現場のなかで、自然と向き合い続けたからこそ導き出せた答えだと言える。