風景録

多忙な日常を送られるご夫妻が求めたのは、こころからリラックスできる暮らしの風景。その想いに応えるため、雄大な里山の眺めを借景し、奥行きのある開放的な造園を計画した。忙しく過ぎる日々の中でも、四季の移り変わりを感じられるよう、主庭である裏庭は「春」を、玄関がある西側の前庭は「秋」をテーマに植栽。春にはご長女誕生記念樹であるしだれ桜が咲き、秋には紅葉が楽しめる。また、二階からも鑑賞できるよう中庭は高さのある樹種を選定、どこにいても緑が視界に入ってくる工夫を凝らした。裏庭にはご夫妻こだわりの露天風呂も。湯船からこぼれる湯水の流れと、裏庭全体に敷かれた小石で川を表現。そこに黒御影の天然石で橋をかけ、背の低い地被類の植栽で水面に浮かぶ三日月を演出した。静寂とした落ち着きあるデザインの中にも、隠れた物語が込められている。「この家に暮らして時の流れが変わりました。」とご主人。自然風景がもたらしてくれたのは、贅沢な時間であり、ご夫妻にとって人生そのものだったかもしれない。