風景録

完成から数年、ベランダの水辺には、野生のウミガメが遊びに来るようになった。宮古島シギラベイサイドスイート アラマンダは、沖縄本島からさらに南西 300km離れた、ラグーンの水辺に佇む国内最大級のスイートヴィラだ。海や空は美しい青のグラデーションを描き、植物は青々と力強く、南国の花々が季節ごとに彩る。造園の見どころは、数年後の景観を見越して、あえて未完成の状態のまま納品したこと。例えば、宮古島の植物は気候の影響もあり成長が早いので、1m程の苗木を植えれば2年でほぼ修景する。そのため、自生を促すことで、周りの環境に馴染むように植栽。1年も経たないうちに、虫や小鳥などの小動物が生息するよう計画した。さらに、各客室の目の前に設けられた水辺は、自然と近い水質に保ち、泳ぐ魚の種類にも気を配っている。人工の滝は、石組みで水の流れかたや水位を誤差 1cm単位で調節し、視覚的・聴覚的な心地よさを追求した。ここでも、石組みはサンゴ礁を用いるなど宮古島現地の素材を生かしている。造園はつくって終わりではない。時間とともに自然の一部に成っていく。今、野生のウミガメだけでなく、虫や小鳥などの小動物たちも遊びに来る憩いの場となっている。